アマゾンの村上春樹








2010年12月17日金曜日

●おすすめの本「パン屋再襲撃」村上 春樹

微妙にくい違った人と人の心が、ふとしたことで和んでいく様を、ユーモアとペーソスをまじえ、深海のイメージによせて描く作品集


彼女は断言した、「もう一度パン屋を襲うのよ」。

学生時代、パン屋を襲撃したあの夜以来、彼にかけられた呪いをとくための、このたくらみの結果は…。

微妙にくい違った人と人の心が、ふとしたことで和んでいく様子を、深海のイメージによせて描く六作品。

ところで、いろんな所に出てくる〈ワタナベ・ノボル〉とは何ものだろう?


「ファミリーアフェアー」が、お勧めです。

何度も読みかえしたほど。

妹の結婚話を機に、少しずつ、変わり始める「僕」と「妹」の関係。
それは、あたりまえのように繰り返されていた「僕」の日常の中に、「戸惑い」をもたらした。

「僕」が、変わっていく「妹」との関係を透かして、変わろうとしている「日常」をぼんやりと眺め、受け入れていこうとする… 

そんな「僕」の心の奥に見え隠れしている「妹」への優しさが、この話を包んでいます。

いつもの村上春樹ワールドに、どこかしらの優しさがブレンドされて、ほっとさせられる1話でした。

「ねじまき鳥クロニクル」の序章となる「ねじまき鳥と火曜日の女たち」を含む短編集。

ちょっとした日常が、なにかによって損なわれてしまう人達の話。

そして、もとに戻れなくなってしまう人達の話。

それをどう受け止めるのか?

アンチクライマックスの先に、何かが見える作品。


梅雨明けの涼しい青空の下、オープンカーの幌を上げて まっすぐに続く道をドライブしているかのような短編集。
(あくまで個人的印象)

パン屋は襲撃され、象は消滅し、妹は結婚すると言い出し、 あれから3年経ち、強風の中日記のためのメモを書く男がいて、 スパゲティーは茹で上がる寸前。

カラッと笑えて、余計なことなんか考えずに 「ああ面白かったな」と思える。

旅の友に読むのにとてもいい本だと思う。

村上春樹の短編集の中で最も好きな作品。
一編一編のクオリティが非常に高い。


●「パン屋再襲撃」

まず、この「再」襲撃の意味についてだが、登場人物は短編集「カンガルー日和」の中で若い頃に一度パン屋を襲撃した過去を持つ。
だから、「カンガルー日和」を事前に読んだことがあれば倍増とまでいかなくても、楽しさは増す。
そして、当時のパン屋襲撃の呪いが今は結婚した夫婦に襲いかかる。
呪いによって真夜中に激しい空腹感に苛まれた夫婦は、車を走らせ「マクドナルド」を襲うことにした。
夫婦の呪いは解くことができるのか。


●そして、これも名作「象の消滅」。

町で飼育していた象がある日突然、飼育員とともにこつ然と姿を消してしまう。
それは状況から見て明らかに逃げたのではなかった。
消滅したのだ。
ただ、そんなことは誰も信用しないが「僕」だけは人に言えないものを目にしていたのだった。


●「ファミリー・アフェア」

村上春樹の作品で主人公の兄弟が主体的に登場する物語はあまりないので、この作品は非常に珍しい。
兄と妹のファミリー・アフェアが描かれる。
村上作品にいつも登場するような、社会を斜に構えて見ている「僕」に対して現実的な「妹」。
その妹が婚約した。
相手の男との関係の中で見せる兄妹の掛け合いが、非常にユーモラス。
兄妹とはいえ、これほどコミカルに人間関係が描かれる村上作品が他にあるだろうか。


●「双子と沈んだ大陸」

この双子は「ピンボール」に登場する双子。
主人公はこの双子が家から出て行ってしまった後に、偶然雑誌の写真で彼女達を発見する。
そして、主人公が勤める事務所の隣の歯科医院には「笠原メイ」と言う名の女の子がいる。
「ねじまき鳥」に登場する「笠原メイ」の名前はここからとられたのだろうが、キャラクターはまったく異なっている。
全体として、初期の村上春樹の乾いた雰囲気を思い起こさせる。

「ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界」
短編ならではの言葉遊び。


●「ねじまき鳥と火曜日の女たち」

これは題名とおり長編の「ねじまき鳥」のベースになっている作品。
長編の初めの部分が、ほぼこの時点で出来上がっていたということがわかる。
長編の「ねじまき鳥」を読んだ人なら、この短編からあれだけの長編にまで膨らんでいく、作家の仕事について思いを馳せることになる。

やっぱり名作だ。

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2010年12月16日木曜日

●おすすめの本「カンガルー日和」村上 春樹 

都会のメルヘンを綴るショートストーリー集時間が作り出し、いつか時間が流し去っていく淡く懐かしい気分に満ちた独特のハルキ・ワールド。

都会の点景を描く魅力の短編18編。
佐々木マキの絵11点を収


時間が作り出し、いつか時間が流し去っていく淡い哀しみと虚し

都会の片隅のささやかなメルヘンを、知的センチメンタリズムと繊細なまなざしで拾い上げるハルキ・ワールド。

ここに収められた18のショート・ストーリーは、佐々木マキの素敵な絵と溶けあい、奇妙なやさしさで読む人を包みこむ。


目立って超有名!!という作品が収録されているわけではありませんが、いずれもはずれのない短編集です。

お茶の時間や、電車の中でも気軽に手にとって読めるのではないでしょうか。

文庫、ハードカバー共に収録作品に違いはありませんが、私はこちらのハードカバーバージョンをお薦めしたいです。

何と言っても見た目が可愛らしい(^-^;)ので・・・

ムラカミ作品ではおなじみの佐々木マキさんの表紙・イラストはもちろん、ケースから取り出した時に見えるきれいなイエローの本体や、真四角に近い形がポップな印象を強めます。


価格的には確かに文庫よりお高いですが、手元においておきたい1冊。

村上春樹の 充実した長編小説や 端正な短編小説集に比べて 本書での村上は 実にリラックスしている。

軽い話をさらりと書いているだけだ。

村上春樹の初期の短編集であるわけだが 当時の村上春樹のエッセンスに満ちている。

そう 村上春樹は お洒落で スタイリッシュで カルトな小説家だったのだ。

 

今の村上春樹を知っている我々である。

ノーベル賞すら噂される文豪になった村上春樹だが このカンガルー日和を読み返すと懐かしいものがある。

これを読んでいた20年前を思い出す。

喫茶店に一人で入って ぼんやり本書を読むことが素敵だった事を思い出す。

あれから 小生も遠いところに来てしまったと感慨にふける。それも人生か。


他の短編の中には「羊をめぐる冒険」に出てくるいくつかのシーンを見つけることができる。

雪の降る札幌の町、そして羊男。

長編の断片を見るようで、ファンとしてはやっぱり楽しい。

僕だけが年を取る


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2010年12月13日月曜日

●おすすめの本「中国行きのスロウ・ボート」村上春樹

青春の追憶と内なる魂の旅を描く表題作ほか6篇。

著者初の短篇集。


村上春樹、初期の珠玉の短編集。特に「最後の午後の芝生」は青春の一場面を、断面的にさっと切りとったような爽快さともの悲しさが感じられる、彼ならではの傑作ではないかと思います。

感情を抑制しつつ、押さえられているが故により印象的な情感を簡潔にクロスさせながら物語は進行していきます。

実際に読んだのは、もう二十年近く前ですが、(なんと毎年)夏がくると読みたくなり、そのたびに読み返しています。

本来的に彼の(少なくともこの頃は)文章に向かう能力というものは、歯切れの良い短編向きだったのではないか、という感を強く持つ代表作。


村上春樹、初期の短編集です。

短編集はこの他にも幾つか出ていますし、僕も幾つか読みましたが、僕はこの短編集が一番気に入っています。

決して稚拙ではないけれど、どこか危うくバランスを崩しそうな、積み木のような作品たちが詰まっています。

僕は「シドニーのグリーン・ストリート」がお気に入りです。

2000年以降の作品しか読んだことがない方には、是非手に取ってほしい一冊です。

著者の第一短篇集。七つの短篇が入っています。初出掲載は、次のとおり。

『中国行きのスロウ・ボート』——「海」1980年(昭和55年)4月

『貧乏な叔母さんの話』——「新潮」1980年12月

『ニューヨーク炭鉱の悲劇』——「ブルータス」1981年3月

『カンガルー通信』——「新潮」1981年10月

『午後の最後の芝生』——「宝島」1982年8月

『土の中の彼女の小さな犬』——「すばる」1982年11月

『シドニーのグリーン・ストリート』——「海」臨時増刊「子どもの宇宙」1982年12月


 
なかでは、随分久しぶりに再読した『午後の最後の芝生』が、やっぱり素敵だった。

この作品のみずみずしい香り、主人公の十八か十九歳の夏の思い出の風景は、本当に魅力的で、ただ好きだ、としか言えない。

主人公の青春の気分が、透明な清々しさをたたえたタッチで、実に品よく描かれているから。

格別、次の二箇所の文章に惹かれた。

≪空には古い思いでのように白い雲が浮かんでいた。≫

≪日の光が僕のまわりに溢れ、風に緑の匂いがした。蜂が何匹か眠そうな羽音を立てながら垣根の上を飛びまわっていた。≫
 

それと、『シドニーのグリーン・ストリート』に挟まれた三枚の挿絵(飯野和好)が、いいね。

私立探偵の「僕」、ウェイトレスの「ちゃーりー」、ぶっきらぼうで乱暴な「羊博士」の三枚の挿絵。


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●おすすめの本「1Q84」村上春樹

1949年にジョージ・オーウェルは、近未来小説としての『1984』を刊行した。
そして2009年、『1Q84』は逆の方向から1984年を描いた近過去小説である。

そこに描かれているのは「こうであったかもしれない」世界なのだ。
私たちが生きている現在が、「そうではなかったかもしれない」世界であるのと、ちょうど同じように。

村上春樹作品といえば「あきらめようよ。現実を受け入れよう」と主張する作品がほとんどだった。

君たちは理想郷を思い描くけれど、僕らは現実の世界で生きていくしかないんだ。

ここで現実を受け入れるしかないんだ、と。

この作品では駄目だと思ったら場所を移せと言っている。

30年前「風の歌を聴け」で同じ作者が主人公に言わせたのは、「どこも同じさ」というセリフだった。
でも同じじゃない。
月が二つある世界に留まっちゃいけない。猫の街に留まっていたんじゃ、どうにもならないこともある。

そこでは一歩を踏み出す勇気が、親しい人に別れを告げる勇気が、そしてうまく行かない理由が自分にあるのではない、環境が変われば自分はうまくやれるんだ、と自分やまだ見ぬ別世界の可能性を信じることも、必要になるのだろう。

興味深い登場人物がたくさん現れるけれど、彼らの一人一人について、猫の街に留まってしまった人なのかどうか、留まってしまったのだとしたらなぜなのか。
いろいろ考えてみると話が長くなりすぎるほどテーマが詰め込んである。

天吾の父親はまるで古い村上春樹作品の主人公が年老いた姿のようにも見える。

完全に自立し、誰にも何も期待せず、諦めてしまった人の姿。神や救世主に依存するカルト信者たちと、完全に絶望し生きる力を失った老人。

逃げた先で悲劇に見舞われた不倫女。

暴力夫から逃げ出せない妻。

愛されることを諦めた野獣。

救世主の正体を確かめる勇気が湧かない人々。


猫の街に迷い込むことも、そこに住んでいる誰かに会いに行かねばならないこともあるだろう。

でもそこで死後の救済を待ち続けるような人にだけはなっちゃいけない。

汽車が迎えに来なくても、線路を歩いてゆく行動力が必要だ。

村上さんの作品に出口はないと思っていました。

でも、book1と2を読み終えた時点で、ノルウェーの森では助けることの出来なかったものを、ここでは助けられるのではないかと強く感じました。

そして、このbook3を読んで"ある種の問題は、それが起きたときと同じ次元では解決できない"と言う言葉を思い出しました。

リサランドールという科学者が探している異次元と、この作品の中に出てくる月が二つ見える世界は同じなのではないかと思います。

現実と村上春樹の世界は実は同じだったと言うことになってほしいと僕は思っています。

この内容がまったく現実離れをしていると思う人もいると思いますが、すでに月を二つ目にしている読者もいると思っています。

こういう世界が、もっとたくさんの人の心の中に入っていき、それぞれが見ている現実をもう一度疑う機会になればいいと思います。

できれば、たとえて言うなら、二つ月が見えることもおかしくないと思えるような状況が増えればいいと思うのです。

book4が気になりますが、青豆のように自分の世界を自分が決めることを強く思い生活していきたいです。


しかし、こういう形でこれからの世界を表現してくるところに、僕は強く親しみを感じます。

僕のいる世界だからでしょうか、こういうことが増えていくことを願ってやみません。


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●おすすめの本「アフターダーク」村上春樹

真夜中から空が白むまでのあいだ、どこかでひっそりと深淵が口を開ける。
「風の歌を聴け」から25年、さらに新しい小説世界に向かう村上春樹書下ろし長編小説

マリはカウンターに置いてあった店の紙マッチを手に取り、ジャンパーのポケットに入れる。
そしてスツールから降りる。
溝をトレースするレコード針。
気怠く、官能的なエリントンの音楽。
真夜中の音楽だ。


近年の村上作品の特徴である形而上学的な三人称の語りが、この作品では全体を通してとても色濃く用いられている。

内容としては、現代を生きる我々にとって、目を背ける事の出来ない問題が掲げられている。
情報化社会の只中で、何を信じて生きていくのか。
一夜を細かい時間で区切って、一冊で描ききるという手法は新しく、妙にリアルを感じて、それが逆に怖かった。

また、村上作品には、良くも悪くも、博識なキャラクターが、文学や哲学について語る場面が印象的だが、この作品ではそういった場面が皆無であり、そしてマリの読んでいる「分厚い本」のタイトルが最期まで明かされず、マリが「ファミレスでじっと本を読んでるのも、だんだん辛くなってきたみたい」と言うなど、今までに無い現実的な描写が印象的だった。

村上氏は某文芸誌で、この『アフターダーク』について、「出来るだけ簡単な文章で、出来るだけ複雑な話を書く」と言っていたことが強く印象的だったが、正にその通りの作品だと思う。もう少し評価されてもいい作品。

一晩で読み通せる長さも現代的。


冒頭、アラン・ロブ=グリエの小説を思わせる、しつこいまでの情景描写から入っていく。
その意味では、この小説の主人公は視点を共有する読者なのかもしれない。

そして、ファミレスで出会う若い女性と男性を中心に、その姉、ホテルに置き去りにされた中国人売春婦とホテルの経営者、顔のない男などがからみあって、時間が進行する。
 
村上にとって、大きなターニングポイントとなったのは、阪神大震災と地下鉄サリン事件だった。
これまで、村上は個人の内部にある「やみくろ」を相手にしてきた。

でも、実際には「やみくろ」は地下に存在し、本当にそこから出てきて人を陥れる。
だとすれば、作家として村上は現実にコミットしていく必要性を感じることになる。

その結果が、「アンダーグラウンド」とその続編であり、「神の子供たちはみな踊る」であり、「ねじまき鳥クロニクル」におけるノモンハン事件であった。

その中でも、「アフターダーク」は「神の子供たちはみな踊る」をもう一歩進めたものといえる。
地震が起きた時間、みんなは何をしていたのか、そのことがあの連作短編集を支えていたのだとすれば、「アフターダーク」は任意の深夜を切り取ったとき、それぞれの人生はどうなっているのか、ということになる。
 
結論じみたことを言ってしまえば、本書の中には罠も用意されており、100%ハッピーエンドとはいかない。

それでも、人が前に進む意思が少しでもあれば、何とかやっていける。闇はまたやってくるのだけれども。



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2010年12月12日日曜日

●おすすめの本「海辺のカフカ」村上 春樹

15歳の誕生日、少年は夜行バスに乗り、家を出た。

一方、猫探しの老人・ナカタさんも、なにかに引き寄せられるように西へと向かう。

暴力と喪失の影の谷を抜け、世界と世界が結びあわされるはずの場所を求めて。


「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」—15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。

家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。
古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。
小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真…。


読者のイメージ(創造力)を重視し、謎は謎のままあえて具体化してない点が良さかと思います。

佐伯さんは、15歳の佐伯さんなのか50歳の佐伯さんなのか、田村カフカが愛したのはどちらなのか。
またその佐伯さんを女性として愛したのか、失った母を求めたのか。
また、佐伯さんはカフカに対し過去に失った恋人を求めたのか、それとも子供への愛なのか。

過去と現在の時の狭間で動く心に永遠というテーマを感じました。

また、ナカタさんという人間が入り口を開けてまた締めるというトリガーとして登場していますが、不思議な存在感を発揮し、作品全体の雰囲気を穏やかで神秘性のあるものにしているところも魅力かと思います。


ねじまき鳥クロニクルを越えて、村上作品の最高峰だと思います。

切実さは遠のき、円熟と知性とユーモアと、魂の救済があります。

なんだかんだ言ってもやっぱり、結局のところ「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」が一番だよな〜と思っていたけど、1Q84後に再読し、改めてその力に圧倒されました。

何を読んでいたのか、と自分であきれました。

これからの人生で何度も読み返し、そしてその都度、それまで気づかなかったその力を実感することになると思います。本当にすごい本だと思います。


少年時代、その時期にしかない一瞬を扱った小説なのかな。
よくある小説のように、現実をわかりやすく、より軽快に、より明快に描くのではなく、 メタファーで満たし、より寓話的に、より暗示的に描くとこうなるのかなー、と感じた。

「世界はメタファーだ」

「この僕らの住んでいる世界には、いつもとなり合わせに別の世界がある」

ほかの作品でもよくあるように、2つの世界から物語は語られる。

別の世界。今回は対比がとてもくっきりしているように感じた。

一つのものが、複数のものと隣り合わせにある。

難しいことはさて置いて、 ナカタさんとホシノさんのやりとりがすごく良かった。

村上春樹はこういう単純なのも書けるんだ。


超ド級の娯楽小説でもある。


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●おすすめの本「スプートニクの恋人」村上 春樹

「僕」が帰って来た。
平仮名の「ぼく」になってはいたけれど、それは紛れもなく鼠の友人であり、直子の恋人であり、ビールとジャズとコットンシャツを愛する「僕」だった。 

「ぼく」の女友達すみれが17歳年上の女ミュウに恋をする。
しかしミュウは過去の事件が邪魔して求愛に応えられない。

すみれは姿を消し、「ぼく」は彼女を探しにギリシャへ向かう。 

村上春樹が支持された要因は主人公のクールでミニマムなライフスタイルにあった。
ところが「ねじまき鳥」から「オウム」にかけ、彼はどんどん熱くなっていった。

置いてけぼりにされた昔ながらのファンは、今回ホッと一息というところか。


とても奇妙な、ミステリアスな、この世のものとは思えない、22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。

広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。

それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした。

そして勢いをひとつまみもゆるめることなく大洋を吹きわたり、アンコールワットを無慈悲に崩し、インドの森を気の毒な一群の虎ごと熱で焼きつくし、ペルシャの砂漠の砂嵐となってどこかのエキゾチックな城塞都市をまるごとひとつ砂に埋もれさせてしまった。

みごとに記念碑的な恋だった。

恋に落ちた相手はすみれより17歳年上で、結婚していた。更につけ加えるなら、女性だった。

それがすべてのものごとが始まった場所であり、(ほとんど)すべてのものごとが終わった場所だった。

孤独さが悲しくて仕方が無かった。
この作品は現実の世界を描いていない。

人間の生きている世界から、観念的な部分だけを取り出して物語にしたもの。

そう思わないと、自分の中の片恋がむき出しになって、つらいのだ。
けれど、意図的に目を背けて見ないようにしている感情のひとつを思い出させてくれて、今呼吸することの幅を確かに広げてくれる、優れた作品だと思う。

この小説はかなり評判が悪い。

だが作品としては、ある観点から眺めれば、成功しているといえる。
これはもともと全集に収められた「猫」を主軸としてかかれたもの。

そういった意味では、「蛍」「「ねじまき鳥と火曜日の女たち」のそれぞれを軸にした小説へ発展した『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』と同系列である。

それは村上の言葉を借りれば、「書かれたがっている」小説であり、なぜこれらがそのようになるかをじっくりと考えなければ、真の作品の意味が問われることはない。

商業的に失敗かもしれないが、作品の上では如実に村上の深まりを見せている。
さらに最近では明らかに商業と作品とを区別しているように感じる。

世界広しといえども、「売れる文学」を書ける数少ない小説家だ。

マラソン選手が常に全力で走らないように、この作品は次へのステップへと続く重要な中継地点である。
後半で舞台となるギリシャの小島は、レスボス島をモチーフとしているだろう。

女性の同性愛を意味するレズビアンの原義である「レスボス」(レズビアン=レスボス島の住民)である。
夜の島で音楽が聞こえ始める。

おそらくこのシーンが作品のクライマックスである。主人公とその不安を同調できれば、狂気にも似た神秘が体験できるだろう。

大事なのはもはやストーリーそのものではなく、また、構成でもなく、この作品自体に負荷された「重み」もしくは暗闇に引き込む「引力」であるように思う。


スプートニクの恋人

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●[スプートニク]

1957年10月4日、ソヴィエト連邦はカザフ共和国にあるバイコヌール宇宙基地から世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げた。
直径58センチ、重さ83.6kg、地球を96分12秒で1周した。

翌月3日にはライカ犬を乗せたスプートニク2号の打ち上げにも成功。
宇宙空間に出た最初の生物となるが、衛星は回収されず、宇宙における生物研究の犠牲となった。

2010年12月11日土曜日

TEST

▼ねじまき鳥クロニクル(第1部)改版

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●おすすめの本「ねじまき鳥クロニクル」村上 春樹

読売文学賞を受賞作品


ねじまき鳥が世界のねじを巻くことをやめたとき、平和な郊外住宅地は、底知れぬ闇の奥へと静かに傾斜を始める…。

駅前のクリーニング店から意識の井戸の底まで、ねじのありかを求めて探索の年代記は開始される。


岡田亨は30歳で、勤めていた法律事務所を辞め失業中。飼い猫は家出をしていて、出版社に勤めている妻のクミコは最近帰りが遅い。

そんなところへ、知らない女から奇妙な電話が掛かってきて、それから僕の人生は不思議な方向へと流れ出す。

変えようのない「運命」と自己の「意思」が、場面・人物を違えて何度も錯綜し衝突する、つづれ織りのような小説です。

違う場面で繰り返し出てくるキーワードがいくつもあって、一見関係ないお話たちが交錯して一つにつながっていきます。

私は豊富なメタファーの向こうに、氏が「書く」という行為に至った魂の遍歴のようなものを読み取ったような気がします。

実は私小説的な意味合いが強い作品なのではないかと思っています。


3部作なので読む前は長く感じますが、私はぐいぐいと小説世界に引き込まれていって読み終わるまで出てくることができませんでした。

傑作です。


「流れというのが出てくるのを待つのは辛いもんだ。しかし待てねばならんときには、待たねばならん。その間は死んだつもりでおればいいんだ」。

作中に出てくる本田さんの言葉です。

ネコの失踪という問題に始まり、香水のニオイを残していなくなってしまう妻。
物語がじょじょに流れ出していく第一部です。

個性豊かな登場人物たちや、主人公の悩める心情に共感しているとあっという間に読んでしまえる一冊です。

国境の南、太陽の西 の後の作品であり、スプートニクの恋人の前の作品にあたる。第一部のみ、雑誌で連載されたものであるが、全体の空気を通して作調の変化は感じられなかった。

又、著者はこの作品により読売文学賞を受賞している

ねじまき鳥クロニクルは現在発売されているアメリカでの村上春樹ベスト、海辺のカフカを除けば、アメリカ人に"村上春樹"と言われれば浮かぶタイトルである。

ひとつに、この作品の主人公は(大局的に捉えた)アメリカ人としてのアイデンティティを体現したような存在でもありうるから、そのように彼らに印象づけたのではないだろうか。

基本的に主人公は弱さを出すことが無い。
感性が鋭く、筋道を立てて考えることができ、しかし、それがあるにもかかわらず流れに身を任せる事も忘れていない。

極めて実務的な人間である。

この物語は、"僕"がマルタという登場人物に言ったが如く「まるで禅のような話」に、そのような性格の主人公が人の手を、または場所の力を借りて、捉えどころの無い流れに挑んでいく話…という風に私は読んだ

日本文学は人物の深みを掘り下げていく事が少なくないが、この作品は人物ではなく、時代でもなく、人間の存在でもなく、なにようか言い表せない世界を掘り下げていく。

驚くことに、そういった物語でありながら、話の筋は霧散せず、それぞれの複線や、ストーリーの流れは、理屈や構成だけで捉えても合点のいくように編まれている。

それだけでも十分に興味深く、考えさせられる。

時間のあるときに、じっくり読むと自分の世界を深く変えられたような気分になる小説である。


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●おすすめの本「国境の南、太陽の西」村上 春樹

村上春樹の4年ぶりの長篇書下ろし小説。

一人っ子として、ある欠落感をもっていた始に、小学校時代、同じ一人っ子の女の子の友達が出来る。

25年後、37才の時、2人は再会し、激しい恋におちる――。



今の僕という存在に何らかの意味を見いだそうとするなら、僕は力の及ぶかぎりその作業を続けていかなくてはならないだろう―たぶん。

「ジャズを流す上品なバー」を経営する、絵に描いたように幸せな僕の前にかつて好きだった女性が現われて―。



発売と同時に読みました。

そのときは,失敗作なのではないかと思いました。


しかし,10年以上経って,読み返してみると,印象は全く異なっていました。

今は,どなたかも書かれていましたが,ノルウェーの森を遙かにしのぐラブストーリーといえると思います。

ただ,単なるラブストーリーにとどまらないところが村上春樹だと思います。

人生の暗く,苦しい面を,はっきりととらえていて,恐ろしいほどです。

再読してから後,何度も読み返しました。そのたびに発見があり,小説としての魅力を感じる一方,その表現の深さに,たじろいでしまいます。

通常の小説を読むときとは,異なる経験です。


また10年後に読むとしたら,さらに深い理解ができるかも知れません。

あくまでも,わたし個人の感想ですが,一度読まれて,あまり感心しなかった方も,そこで結論を出してしまわずに,何年かしてから,再び読まれることを強くお勧めします。


国境の南、太陽の西 (講談社文庫)


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2010年12月10日金曜日

●おすすめの本「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」村上 春樹

谷崎潤一郎賞受賞作品。


高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。

老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。

静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。


自分が自分である所以とは何かを考えさせられる、非常に深い物語。

「私」は心に他人には踏み込めない「壁」を抱えた人間。

その「壁」の中には「街」がありもう一人の「私」はその街に暮らしている。

つまり壁の中の街は主人公の自我を象徴している。


人間は「心」があるから悩み、憎み、苦しむけれど、「心」があるからこそ幸せや喜びを感じることができる。

でも一体「心」とはなんなのか?

自分の「心」はどこにあるのか?


そんな答えの出ない疑問を投げかけ続ける、哲学的な物語。


村上作品の中でもっとも骨太な作品だと思う。


こういう「とてつもない」独特の物語を書くことが出来るのは、やっぱり村上春樹しかいないのだ。

登場人物が困難な状況に陥っても、誰一人狼狽しない。

これだけの冒険物語を、心静かに読ませることが出来るのは彼しかいない。



何度読んでも圧倒され、引き込まれますね。

「世界の終わり」と「ハードボイルドワンダーランド」との2つのストーリーが最初は何で交互に出てくるのだろうと思い、その内に何か関係ありそうだと思い、最後に繋がるのだけれども、それが本当にどんな繋がりなのかを読後も考えされられてしまう物凄い作品です。

どうしてこんなストーリーを考え付くのか想像を絶するものがあり、ハルキストのみならず、文学好きの人にはたまらない作品だと思います。

本質は真面目ながら、随所にユーモアがあって(机の上にたくさんクリップがある理由が分かったときは笑ってしまいました)、迫力満点で、読んでいて思考回路がフル回転する気分です。

また、絶対映画化出来ないだろうなと思いますし、それぐらい文学のレベルの高さを感じさせてくれます。

それから、太った娘が何でいろんなことを知っているんだろうと不思議な感じでした。

そうでないとストーリーが進まないからですかね。

星5つでも足りないぐらいです。


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●おすすめの本:「ダンス・ダンス・ダンス」:村上春樹

『羊をめぐる冒険』から4年、激しく雪の降りしきる札幌の街から「僕」の新しい冒険が始まる。
奇妙で複雑なダンス・ステップを踏みながら「僕」はその暗く危険な運命の迷路をすり抜けていく。

70年代の魂の遍歴を辿った著者が80年代を舞台に、新たな価値を求めて闇と光の交錯を鮮やかに描きあげた話題作。

本作品の本当の主人公は「いるかホテル」なんじゃないだろか?

そこで繰り広げられる「生」と「死」の物語。



村上春樹にしては珍しくミステリーっぽいこの作品。

『羊をめぐる冒険』もなかなかスピード感があったが、今作はそのミステリー感の影響でさらにスピード感のある作品となっている。

あんまり書くとネタバレになるので書かないが、今作のテーマは『死』と言っても良いと思う。

ある場面で主人公はこんなことをユキと言う不思議な少女に語りかける。

「人の生命というのは君が考えているよりずっと脆いものなんだ。だから人は悔いの残らないように人と接するべきなんだ。公平に、できることなら誠実に。そういう努力をしないで、人が死んで簡単に泣いて後悔したりするような人間を僕は好まない。個人的に。」

良い台詞だ。

80年代後半に書かれたとは思えないくらい新しい。

一読の価値アリ。



本書は評価としては分かれているようだ。

むしろ 元々の村上ファンからは 幾分かマイナス評価を得ている趣もある。

確かに 話がきちんと完結しておらず 答えを出さないというスタイルが本書あたりから 村上には出てきたような気がする。

その点で 読んでいてもどかしさがある。
 
但し 初期三部作、特に 始めの二作に見られた村上のスタイリッシュな軽さの中に おりのようによどんでいたものが はっきりと主張され始めたという点では貴重な一作だと僕は考えている。ストーリーテリングの冴えも申し分ないと思うからだ。


「踊るんだ。
 音楽の鳴っている間は踊り続けるんだ。
 なぜ踊るなんて考えちゃいけない。
 意味なんてもともとないんだ。
 どれだけ馬鹿馬鹿しく思えても、
 きちんとステップを踏んで踊り続けるんだよ。
 まだ手遅れになっていないものもあるはずだ。
 使えるものは全部使うんだよ。
 ベストを尽くすんだ。
 とびっきりうまく踊るんだ。
 みんなが感心するくらいに。」


「繋がっている。
 僕としては、この線をだどってみるしかない。
 この糸を切れないように注意深く辿っていくんだ。
 とにかく動くこと。
 立ち止まらないこと。
 こっちの世界に居続けるんだ。」
 


★念のために本作品のシリーズを順番に書いておくと。

「風の歌を聴け」→「1973年のピンボール」→「羊をめぐる冒険」→「ダンス・ダンス・ダンス」



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2010年12月9日木曜日

●超おすすめの本:「羊をめぐる冒険」:村上春樹

野間文芸新人賞受賞作

村上春樹初期作品の中での最高傑作。


1通の手紙から羊をめぐる冒険が始まった 消印は1978年5月 北海道発

あなたのことは今でも好きよ、という言葉を残して妻が出て行った。

その後広告コピーの仕事を通して、耳専門のモデルをしている21歳の女性が新しいガール・フレンドとなった。

北海道に渡ったらしい<鼠>の手紙から、ある日羊をめぐる冒険行が始まる。


新しい文学の扉をひらいた村上春樹の代表作長編。


大変読み応えのある小説でした。

友情と愛情と冒険とサスペンス。

幻想的な情景とミステリアスなストーリー。

「風の歌を聴け」や「1973年のピンボール」のエピローグがあったり、「ダンス・ダンス・ダンス」のプロローグがあったりします。

もっとも僕は、羊男のイラストが一番ショッキングだったりしましたが。

この村上春樹の羊系小説を読む場合、風の歌を聴け→1973年のピンボール→羊をめぐる冒険→ダンス・ダンス・ダンスの順番で読むことをお薦めします。


タイトルこそ違いますが、これらはリンクしております。

僕はそれを知らずに順番めちゃめちゃに読んでしまったため話が前後してしまいました

残念!


★「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」とともに、俗に「三部作」と呼ばれる小説の3作目。

前二作を先に読まないと半分も楽しめません。

「風の歌を聴け」に出てくる主人公「僕」とその親友「鼠」。

この二人がとても魅力的な人物で、彼らへの思い入れこそがこの三部作を楽しむ上で最も重要になります。


あの二人は文学史に残るアイドルになるかもしれない。

夏目漱石の「坊ちゃん」みたいに。二人は「風の歌を聴け」で20歳前後、「1973年のピンボール」で25歳前後。「羊をめぐる冒険」で30歳となります。

20歳、25歳の彼らとともに青春の苦悩を味わい、”ジェイズバー”でビールを飲み、それぞれの恋をし、バーテンの「ジェイ」と会話を楽しんだ過去があってこそ、30歳の彼らが遭遇する苦難と冒険にのめりこむことが出来るわけです。

「風の歌を聴け」と「1973年のピンボール」に関しては、僕の場合、部分的に20回以上読み返しています。

暗記している場面すらあります。小説を読み返すタイプではないんですが、この二作は別です。短いですし。


★「羊をめぐる冒険」は探偵小説のように謎を追うストーリーです。

探偵小説と青春小説を混ぜ合わせたような小説。

ドラマチックな場面も多い。

三部作の中でも特に人気の高い作品です。

前二作と違って整ったストーリーと緻密なプロット、構成の巧みさをも楽しめます。

特に終盤がいい。

ついでに言うと、この続編として「ダンス・ダンス・ダンス」という小説がありますが、こちらはこの「羊をめぐる冒険」に出てきた人物が中心になります。

つまり人気シリーズなんですね。 「ノルエーの森」以降の村上春樹ファンはぜひ、読んだ方がいいとおもうよ。


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●おすすめの本:「1973年のピンボール 」:村上春樹

僕たちの終章はピンボールで始まった

雨の匂い、古いスタン・ゲッツ、そしてピンボール……。

青春の彷徨は、いま、終わりの時を迎える。

さようなら、3(スリー)フリッパーのスペースシップ。

さようなら、ジェイズ・バー。


双子の姉妹との<僕>の日々。

女の温もりに沈む<鼠>の渇き。

やがて来る1つの季節の終り。

デビュー作『風の歌を聴け』で爽やかに80年代の文学を拓いた旗手が、ほろ苦い青春を描く3部作のうち、大いなる予感に満ちた第2弾。


デビュー作「風の歌をきけ」と 大作「羊をめぐる冒険」の合間の作品で わりと地味という評価が多い。
 
話としては双子の登場、ピンボールを巡る 幾分シュールな展開もあり その後の村上春樹の世界を 強く予感させる作品だ。

いくつかの挿話は 結局答えが出てこないまま終わっていく。
その辺のもどかしさも 既に村上らしい仕立てになっている。

 
但し叙情性に満ちている。

特に 冒頭の井戸掘りの話からはじまり 最後は11月の雨で終わる本作は いたるところに水のイメージに満ち溢れている。

その鮮烈さも捨てがたい魅力だ。

そして これが重要だと思うが 前期村上春樹の一大命題である「直子」という女性が 本作には登場している。
その悲劇性は既に ノルウェイの森の「直子」を予告するものになっている。


三部作の真中は 何でも難しいわけだが 個人的には 極めて好きな作品だ。



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2010年12月7日火曜日

●おすすめの本:「風の歌を聴け」:村上春樹

村上春樹の衝撃のデビュー作

1970年夏、あの日の風は、ものうく、ほろ苦く通りすぎていった。
僕たちの夢は、もう戻りはしない。

群像新人賞を受賞したデビュー作

1970年の夏、海辺の街に帰省した<僕>は、友人の<鼠>とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。

2人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、<僕>の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。

青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。

群像新人賞受賞。

僕の人生を変えてしまった一冊の本だ。

恐らく今、この小説の持つ独特の感触は薄れてしまっていると思う。

小説の賞味期限としてはもちろん長いモノであると思うし、村上春樹さんのデビュー作であるから、今後も読まれていくと思う。


しかし、出版された当時のショックは大きかった。

これを私は高校生時に読んでしまって、その後「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を読んでしまったが為に、新作が出るたびに買わずにはいられない作家になってしまった。


この作品はいろいろしかけは多いのだが、その仕掛けをいちいち解きたくなり、また自分の説を説明したくなるという作用を持つ。
しかし、僕の感じた1番大きなことはまるで消毒された様な文体だった、という事です。

今では当たり前のこの文体ですが、その当時は本当にショックだった。

有名な1度英語で書いて翻訳した、という事実も良く分かりますが、それだけでない突き放した、自分の影を出来るだけ排除し、消した文章が、とても印象的でした。

今はやりの文体の恐らく原点、それを確認してみたい方にオススメいたします。


それと「村上春樹っていったい、何?」という人にもおすすの本です。
3時間もあれば読み終わりますよ。

なんとも言えない、爽やかな読後感が、いっそう、ファンを虜にします。


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●「自信の法則」

所謂、自己啓発本、成功法則本というものだ。
心の使い方を、簡単な50の法則に分け、各法則2ページにまとめて書いてあるので、2~3日で読める。
(121ページ)
簡単に読めるからと言って、役に立たないかというと、とんでもない。
しっかり役に立つ。
「自信をつける方法」なんて、学校でも会社でも習わないが、とても大切なスキルだ。
自信が無いと、電話を受けたり、かけたりすることすら、気合いが必要になる。
会社に行っても楽しくない。
そんな時に、どんなことを思えばいいのか、どんな行動をとったらいいのか、ということを教えてくれる。
自信を失った人、失いつつある人、心配な人にお薦めです。

●「自信の法則」ジェリー・ミンチントン (著), 東洋経済新聞社
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