アマゾンの村上春樹








2011年5月14日土曜日

人生について考えてみたいときにおすすめの小説★『四日間の奇蹟』(浅倉 卓弥)

・・・・・・泣けました。

第1回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞金賞受賞作として、「描写力抜群、正統派の魅力」「新人離れしたうまさが光る!」「張り巡らされた伏線がラストで感動へと結実する」「ここ十年の新人賞ベスト1」と絶賛された感涙のベストセラー。

脳に障害を負った少女とピアニストの道を閉ざされた青年が山奥の診療所で遭遇する不思議な出来事を、最高の筆致で描く癒しと再生のファンタジー。


四日間という区切られた期間を長編で丹念に追う筆致が素晴らしい。

事故でその才能を活かせなくなった音楽家、その事故をきっかけに音楽家と暮らすことになり、その才能を受け継ぎつつある少女、また、彼らの人生にとって重要な役割を果たすことになるもう一人の登場人物。

彼らの織りなす心情が、作品を通して登場するピアノ曲のように細やかに、そして激しくつづられていく。

そうした彼らに訪れた再度の転機となる第二の大きな事故後の数日間のストーリーは、陳腐な表現だが涙無くしてページを繰ることができない。


一言で言うと、 「"生"と"死"に正面から向き合った、命の傑作」だ。

生きる意味を考えさせられる。

自分の人生に自信をつけさせられる。

そんな心動かされる、感動の作品だ。

「何故自分は生きているのか?」

「誰のために?」

「何の目的で?」

「自分が死んだらどうなるのか?」


4日間で僕たちは「自分」を考えることになる。

真面目に人生について考えたい時におすすめの本だ。


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フィリップ・マーロウという生き方★『ロング・グッドバイ』レイモンド・チャンドラー

おすすめの徹夜覚悟の本★フィリップ・マーロウという生き方★『ロング・グッドバイ』レイモンド・チャンドラー (著)、村上 春樹 (翻訳)


私立探偵フィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。

あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。

何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。

しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。

が、その裏には哀しくも奥深い真相が隠されていた…

大都会の孤独と死、愛と友情を謳いあげた永遠の名作が、村上春樹の翻訳により鮮やかに甦る。

アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長篇賞受賞作。


50年代に書かれ、ながらく『長いお別れ』として知られたハードボイルド小説の最高峰と言われてるレイモンド・チャンドラーの作品。

村上春樹による新訳本が出版された。

これは、はっきりいってすごいです。

原作の雰囲気に忠実な村上訳もさることながら、オリジナルのミステリの面白さ、語り部としてのフィリップ・マーロウの圧倒的な存在感にあっという間に引き込まれ、読み始めたら止まらなくなってしまう。

LAでのある殺人事件がきっかけで、重層的に織り成す人間関係の描写から、幾重にも仕込まれたミステリの謎解きも見事。

しかし、もっともすごいのがフィリップマーロウの存在。

村上春樹はあとがきで90ページも費やしているのですが、これだけでほとんど解説本の域に達しており、一冊分の価値があるくらい。

マーロウの行動は、彼の人間としての自我意識の実相をすべて反映していると思えない一方、行動描写は一貫性をもった視点で貫かれている。

ゆえに、マーロウは、実在の人間というよりは『純粋仮説』そのもの、または『純粋仮説の受け皿』であると。

これほど見事な解説には初めてお目にかかった。


マーロウが仮説だからこそ、人間の機微や感情により生じる、あいまいさや柔らかさを一切なくしたような状態、固ゆで卵=ハードボイルドの世界がこれほどの一貫性をもって成立したのか!!!と納得。

マーロウ=ハードボイルド=純粋仮説の受け皿、、、なるほど!!!!


別れるということは、少しの間死ぬようなものだ。(それほどに別れは痛みを伴う) と思っていた。

しかし、別れるということは、これまでの自分の一部が失うことだ。 と知り、言葉の深さにしばし呆然とした。

 
死別の限らず、これまでの人生でいったいそれほどの別れを何度してきただろう。

もしくは、その時その時の別れにそれほどの思いを抱いて来ただろうか。

そう思うからこそ、ロング・グッドバイで描かれる世界観に惹かれ、圧倒的な 苦しさを覚えながらも頁をめくる手が止まらない。

徹夜覚悟で読んでください。 (徹夜するぐらい面白い本、徹夜するぐらい面白い小説。)



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傑作警察モノのお勧め小説★スウェーデンの最高傑作警察物語「笑う警官」シリーズ

『笑う警官』(マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー)


僕がこの「マルティン・ベック」シリーズを知ったのは高校2年の夏だった。

旺文社の「高2時代」という本で紹介していた。

スウェーデンのおしどり夫婦が二人で書いている警察物語。

最終的には10巻になり、10年間のスウェーデンの歴史ものにもなっている。

はっきり言って、おもしろい!

登場人物の深みが、日本のチャチな警察小説とは雲泥の差なのだ。


『笑う警官』について言うと・・・・・

ベトナム反戦デモが荒れた夜、放置された一台のバスに現職刑事八人を含む死体が! 

史上初の大量殺人事件に警視庁の殺人課は色めき立つ。

アメリカ推理作家クラブ最優秀長編賞受賞の傑作。



1967年11月13日午後11時過ぎ。

ストックホルムの街外れで、運転手と乗客の射殺体を満載した路線バスが発見される。

被害者の中には一人の若い刑事が含まれていた。

果たしてこの大量殺人の背景には何があったのか?

殺人課の刑事たちが真相を求めて奔走する…。

 
スウェーデンで1968年に出版された警察小説。

傑作の呼び声高く、その評判を裏切らない“すこぶるつき”の面白さを堪能できる。

 
400頁を越えるこの小説が読者を結末まで一気に引っ張る理由はいくつもある。

 
殺害された乗客たちに何ひとつ共通点が見出せないという事件の背後に、やがて別の迷宮入り事件の影が見え始める。

謎が謎を呼ぶという筋立てのワクワク感は途中一度として読者を飽きさせることはない。


また事件を追う刑事たちの一癖も二癖もある個性が決して突飛ではなく、存在感あふれるその人物造詣は見事としか言いようがない。

中心人物であるマルティン・ベックが抱える夫婦の倦怠感と、両親のそうした危機的状況をまだ窺い知るには幼い娘イングリッドとベックとの父娘の会話。

一方ベック夫妻とは対照的に、コルベリ刑事とその14歳も若い妻グンとの初々しくも官能的なやりとり。

直接事件解明に結びつくわけではない夫婦や家族の挿話が、物語に人間くさい奥行きを持たせている。

 
さらにいえば、この小説は60年代の社会的空気を鮮やかに切り取って差し出す点にも特徴がある。

スウェーデンがまだ第二次世界大戦の記憶を生々しく抱えているという時代背景や、そんな時代にあって今はアメリカがはまりこんだベトナム戦争の泥沼が、遠く北欧の人々にも大きな影響を与えている状況などが描かれている。

それでいてこの40年も前の小説は、今でも決して古びることなく読者を魅了する。

刑事たちと共に、スリルを味わいながら犯人を追った400頁でした。

シリーズの中で1作ごとに確実に歳をとっていく主人公たちの人生模様も楽しめる。


警察物語を超えた警察物語。

手に取って損することはない。

是非、10巻、全部そろえることで人生が深くなることを僕が請け負うね。

最低でも5年間は楽しめメル。間違っても日本の作家による「笑い警官」を買わないでね。



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2011年5月7日土曜日

「読まずに死ねるか!」オススメの大冒険小説●『虎口からの脱出』(景山 民夫)

景山民夫は大好きな作家、エッセイストだった。

最後は事故死(?)的なガス中毒で亡くなった。

エッセイも小説も大好きだった。

80年代、ビートたけし達とテレビのバラエティー番組でふざけていたイメージが強かった景山民夫。


これがもう、面白いのなんの。

国内の冒険小説では久しぶりに、寝る間も惜しんで一気読みしてしまった。

ストーリー、テンポ、情景描写、人物設定すべてが文句無し。

手に汗握る興奮の世界へ読者を誘う冒険小説の大傑作。

まだまだこれから、という歳でこの世を去ってしまった事が残念で仕方ない。

もし、今でも生きていたら、どれ程面白い作品を書き残していただろうか。

そう思わずにはいられない。


本書は「冒険小説」だ。


時は昭和3年、所は奉天。

一瞬の爆風と共に張作霖暗殺さる。

唯一の目撃者である少女、麗華を追って関東軍が立上がる。

奉天軍も動き始める。

そして国民党軍も…。

上海まで1600キロ、期限は3日。

日中全軍を敵に回した脱出行、車輪よ駆けろ!

待望の書下ろし長編冒険小説。


ページをめくるのがもったいないほど面白い、読んでいる途中で、まだ残っているページがこんなにあるのか、と先の展開が嬉しくなる。

そんなときこそ読書の至福の時。


僕にとってこの作品はまさにそういう作品でした。

まるでハリウッドの一級のエンターテイメント映画を見ているかのよう。


古本屋で100円で売られているのをみて、嬉しいやら、悲しいやら。

「読まずに死ねるか!」です。


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流れゆく時を忘れたい時におすすめの本★『テンペスト』(池上 永一 )

美と教養と見栄と意地が溢れる珊瑚礁の五百年王国は悩んでいた。

少女まづるは憧れの王府を救おうと宦官と偽り行政官になって大活躍。

しかし待ち受けていたのは島流しの刑だった――。

見せ場満載、桁外れの面白さ!



珊瑚礁王国の美少女・真鶴は性を偽り、宦官になる―。

前人未踏のノンストップ人生劇場。


おもしろかった、物凄く。

ただし、これを読む時には、ライトノベルだ!と思って、エンターテイメントとして割り切って読まないと、肩透かしを食らってしまう。

僕は、「そここそがいいんじゃあないか!」と思うけれども、歴史大河小説を期待すると、その「軽さ」とエンタメ重視の姿勢に、つまらなく感じてしまう人もいるだろう。

けれども、こういう味付けをしないで、だれが、琉球王国の歴史なんて言うマイナーな部分を小説化してくれるだろうか?、

そういう意味では、著者の戦略と功績は大きいと思う。



もちろんある程度戯画化(カリカチャアライズ)されているとしても、なるほど、琉球王国というのはそういう存在で、そういう「美」があったのか!と思わせる、知らしめさせる物語世界の美しさには、感動します。

ライトノベルの萌え小説として「も」読める、というところにこの小説の素晴らしさがあると僕は思います。


おもしろいこと、おもしろいこと。

この作家の知識の豊富さと、 その史実をベースにした創造力に脱帽。

半端じゃない。

昔の『ベルバラ』っぽくて、とてもいい味を出している。

エンターテイメントとして「時間を忘れて」読むふける、という時間が欲しい方にはぴったりです。


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2011年5月6日金曜日

宮部みゆきのお勧め本★『おそろし 三島屋変調百物語事始』

17歳のおちかは、実家で起きたある事件をきっかけに、ぴたりと他人に心を閉ざしてしまった。

ふさぎ込む日々を、江戸で三島屋という店を構える叔父夫婦のもとに身を寄せ、慣れないながら黙々と働くことでやり過ごしている。

そんなある日、叔父・伊兵衛はおちかを呼ぶと、これから訪ねてくるという客の対応を任せて出かけてしまう。

おそるおそる客と会ったおちかは、次第にその話に引き込まれていく。

いつしか次々に訪れる人々の話は、おちかの心を少しずつ溶かし始めて…哀切にして不可思議。

宮部みゆきの「百物語」、ここに始まる。



江戸の神田三島町の一角に店を構える袋物屋の三島屋。

訳あって、その店の主人である叔父夫婦のもとに預けられ、働くことになった十七歳のちかが、店の「黒白の間」で、そこを訪れる人たちの不思議で怪しい話を聞いてゆく。

不思議で怪しい、切なさと怖さ、恨みと憎しみ、割り切れぬ思いなどが絡まり合ってゆく。

曰く、変調百物語。

その聞き手となった主人公のちかが、語り手となる人たちから百物語の話を聞いていくことで、語り手とそこに関わる人たちの呪いを浄化し、それとともに、自らが負った災厄の根っこを見つめ、逃げずに相対してゆくようになるのですね。

 
著者の『あかんべえ』と好一対の、健気な少女と幽霊あるいは幽鬼たちが心を触れ合わせ、それぞれに浄化、変容、再生していく物語。

第一話「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」の話から、「お! これは、読ませるじゃないか」と、話の中に引っ張り込まれ、「凶宅」「邪恋」「魔鏡」と読み進めていくうちに、いつしか夢中で読みふけっていました。

とりわけ、「魔鏡」「家鳴り(いえなり)」と続く終盤、物語の第四コーナーの一瀉千里、怒涛の勢いは圧巻。

「魔鏡」に出てくる美しい登場人物は、殊に印象強烈。

怖かったなあ。

上村松園の『焔(ほのお)』という絵に描かれた女性がゆくりなくも思い出されまして、ぞおっとしました。

 
愛する心と憎む心、気遣う心と悪意の心、そうした人の思いというのは表裏一体、紙一重のところにあるのだなあと、本書をひもといていくうちに、しみじみ感じ入ってしまいましたねぇ。

登場人物の伊兵衛の言う、<何が白で何が黒かということは、実はとても曖昧なのだよ>との言葉が、ことのほか印象深く、忘れられません。
 
 
蛇足ながら、「最終話 家鳴り」の中、ある人物が言う「姉さんが来た、姉さんが来た」という台詞のことで。

ここはおそらく、著者の敬愛する岡本綺堂『半七捕物帳』の記念すべき第一話「お文(ふみ)の魂」を念頭に置いています。

本書をはじめ、宮部さんの江戸時代ものの小説の雰囲気、

なかでも怪しの雰囲気には、岡本綺堂の『半七捕物帳』『三浦老人昔話』『青蛙堂鬼談(せいあどうきだん)』などの作品に非常に通じるものがあります。

未読の方は、そちらもぜひ、お読みになることをおすすめいたします。



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2011年5月5日木曜日

ほのぼの切ないお勧め小説●『気をつけ、礼。』(重松 清)

僕は、あの頃の先生より歳をとった―それでも、先生はずっと、僕の先生だった。

受験の役には立たなかったし、何かを教わったんだということにさえ、若いうちは気づかなかった。

オトナになってからわかった…


画家になる夢に破れた美術教師、ニール・ヤングを教えてくれた物理の先生、怖いけど本当は優しい保健室のおばちゃん。

教師と教え子との、懐かしく、ちょっと寂しく、決して失われない物語。

時が流れること、生きていくことの切なさを、やさしく包みこむ全六篇。


教師と生徒の関係を描いた短編集。

教師って完璧ではない。

聖人君子でもないし、神様でもない。

この作品に出てくる教師はどれもいい意味でも悪い意味でも 一人の人間である。

責めることは出来ないけれど、 もう少しどうにかならないものか・・・と思う教師もいる。

でも、振り返ったときに生徒と生徒の関係はどれも悪い思い出として残っていない。

もちろん現実ではそういうことばかりではないけれど、自分の経験を振り返ってみても生徒のときはすごく嫌いだった先生でも今思い出すとなぜか許してしまえたりしている。


月日はいろんな意味で寛容なんだな。


この本の中で一番心に残ったフレーズ。

「センセ、オトナにはなして先生がおらんのでしょう。
先生なしで生きていかんといけんのをオトナいうんでしょうか」


忌野清志郎が『RCサクセション』時代に歌っていた『僕の好きな先生』を小説にしたようなものです。

大事件も起こらないし、ヒーローもヒロインもいないけれど、「いい話しだな・・・・」と思える心暖まる短編集。

学校の先生って、実は人生を左右するほどの存在だけど、給料は驚くほど安いよな。(僕は教師じゃないけれど)。

幼稚園や小学校の低学年ほど、「いい先生」が必要なので、もっと給料を上げて欲しい、と、これは本書には関係の無い話し。


『気をつけ、礼。』・・・・・先生のいない「オトナ」にお勧めの一冊。


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